2022.01.30

Miki

Memento mori 【死を想え】

 

アンジェラと私の出会いもかれこれ10年が過ぎる

長身でクールなイメージの彼女

若い頃から決して流行は追わない

いつも同じスタイルの女性

 

紺色のウールのパンツにジャケットという

一見地味で古風なスタイルであるにもかかわらず

その姿がいつも輝いているのは上質な素材を使ったものを

必ず身につけているからであろう

私はそんな揺るぎないコンサバティブ志向の彼女に憧れていた

 

彼女と会うと不思議と落ち着いた時間を過ごせる

待ち合わせ時間ピッタリにくるイタリア人は珍しいが

彼女はその一人で私を待たせることは一度もなかった

 

今日も彼女は紺色のウールのパンツに

晴れた空の色のような水色のカシミアのタートル

そして紺色のジャケット足元はくるぶしまでの茶色のブーツ

 

バールの席につき彼女の右手の人差し指のリングが

目に飛び込んできて私は目を丸くした

 

 

頭蓋骨(Teschio)テスキオのリングをつけている彼女

私の中の彼女のイメージに頭蓋骨のリングは想像できなかった

 

がしかし彼女の細い人差し指に輝いていたそのリングは

優しさを感じさせるものであった頭蓋骨の頭には

キラキラと輝くダイヤモンドが煌めいていた

 

アンジェラは私に手を出して

『Memento mori 』メメントモリはラテン語よ!

イタリア語にすると ricordati che devi morireなのよ!と私に伝えた

 

少し困惑する私を見て彼女はすぐに

『だから今を生きることを大切にするのよ!』と微笑んだ

 

一見怖い言葉に聞こえるこのフレーズ

でもその裏返しはだからこそ生きている今を見つめるのだという

凄くポジティブなメッセージであった

 

注文したカクテルが運ばれてきて

私達は久しぶりの再会の時間を楽しんだ

 

家に向かう道、夜のフィレンツェの街を少し歩いた

いつも素敵なウィンドーのある骨董品屋さんの前を通った時

あるものに釘付けにされるかのように動けなくなった

 

それは・・・

 

 

王冠を被ったテスキオ(頭蓋骨)

何故かとても嬉しかった

これは偶然ではなく必然なんだと確信した

そして私もこの言葉を心に生きていこうと思った

 

 

Memento mori

~「死を想え」 そして 今を生きよう ~