2020.03.18
スタイリストブログ
Segreto ~秘密のひとつ~
同じパラッツォに住む若い女の子のエレナ
母と二人暮らしの彼女は20歳になると噂で聞いた
父親を幼い頃になくした彼女は母を助けるために
高校を卒業してすぐに働きだしたそうだ
階段ですれ違ってもニコリとすることもなく
愛想を振りまくこともない
静かなに挨拶をするだけだった
服装は激しく尖った印象で黒い皮の短いジャケットに
ピタピタのジーンズ、髪はピンク色に染めていた
イタリアではこういう若者が沢山いるので
特に珍しいわけでもない
彼女の肌は驚くほど白く余計に髪の色を強調させている
北イタリア出身の母親によく似ていて
細い輪郭のラインがとても綺麗な女の子だ
天気予報の予想通り大雨の朝を迎えた一日
私は自転車で出かけるのを諦めバスに乗ることにした
バスは予定通りやってきた
出発間際に乗り込んできたのはエレナだった
いつもと同じ格好で私には気づいていないようだった
彼女は一番前の席に座って耳にはヘッドホンをつけて
音楽を聴いているようだった
2つくらい過ぎ去った停留所で年老いた老婦人が
大きな荷物を抱えてバスに乗り込もうとしていた
バスの扉が開いたときエレナが動いた
彼女はすぐにバスの席から立ちあがり
その女性の荷物をバスの中に持ち込んだそして
段差が高くとても不便なバスに乗り込むその老婦人に手を差し伸べていた
私の中にあった彼女のイメージは崩れ落ちた
もしくは崩れ落ちていたイメージが再生されたかのように
彼女の優しい一面に出会い心が熱くなった
何度もお礼をいうその老婦人に
エレナは特に笑顔で返すこともなく
当然のことをしただけという顔をしていた
四角い冷たい外壁の中に隠された彼女の丸い温かさ
私はバスを降りる時に彼女の隣に行き
『Ciao! Elena 』チャオ エレナ と挨拶をした
彼女は私のほうを見て小さな声で
『Buongiorno….』と返事をして下を向いた
いつもと変わらぬ態度だった。
私は『Buona giornata!』素敵な一日を!と残してバスを後にした
誰かから聞いた情報ではなく
見た目だけの姿でなく
その人の扉の反対側を見たら
こんな温かい場面に遭遇できた
外壁の中に隠された秘密は
自分のポジションを少し変えて見てみる必要があるのだと知った・・・・
Segreto( セグレート )
【 秘密のひとつ 】
~ 見た目と違うのよ、わたし ~