2020.10.17

宝石鑑定士ブログ

パパラチアのこと

 

大変久しぶりのアップとなってしまいました。

皆様いかがお過ごしでしょうか。

まだまだ続くコロナ禍ですが、日本ではありがたいことに穏やかな展開となっているのではないでしょうか。

世界を見ればかなり困難な状況にある国や地域があり、日本も全く油断はできません。

日本の、世界のコロナの収束が1日も早く来ることを祈るばかりです。

 

さて、愛佳さんの絵本小説「ネリのほんとうの旅 第3章 パパラチアの塔」はもうご覧になられましたでしょうか。

内容の方は、楽しみにされておられる方も多いと思いますので、ネタバレにならないようここではご紹介は控えておきます。

 

今回のタイトルの「パパラチア」はというのはサファイアの一種になります。皆様ご存知のように赤以外のカラーを持つ「鉱物コランダム」をサファイアと呼びます。(赤はルビーですね)

単に「サファイア」と言えばブルーサファイアのことを指し、それ以外のカラーを全てひっくるめてファンシーサファイアと呼びます。パパラチアはファンシーサファイアの中で最も価値が高いものになっています。

 

純粋なコランダムは無色(カラーレス)ですが、微量元素の存在などでとてもカラフルなバリエーションが生まれます。虹の色で単純に順番通り表現するとバイオレット(青紫)、ブルー、グリーン、イエロー、オレンジ、レッド(ピンク)、となります。虹にはないカラーとしてレッドとバイオレットの間にパープル(赤紫)があり、明度(明るさ暗さ)や彩度(鮮やかさ)の異なる様々なサファイアが存在します。

 

パパラチア・サファイアは、オレンジとピンクの中間色を持つ美しい宝石です。

パパラチア「Padparadscha」は、スリランカで話されているシンハリ語で蓮の花(Lotus Flowerを意味しており、スリランカを代表する希少で貴重な宝石として知られてきました。現在ではスリランカ以外でもアフリカ東部やマダガスカルなどでこの色範囲の石が(数量は多くありませんが)産出しています。

 

このパパラチアのカラー範囲「定義」は、時代、国により変化がありました。取引の混乱を避けるために各国の宝石鑑定鑑別機関などがマスターストーン(比較用の石)等を使い判断基準のすり合わせを行ってきており、現在は以前に比べれば大きな違いは無くなってきていると思います。

 

具体的な色相の範囲はオレンジを帯びたピンクからピンクを帯びたオレンジまでになり、オレンジが強すぎればオレンジサファイアと呼ばれ、同様にピンクが強すぎればピンクサファイアとなります。

色相の変化ではそうですが、例えば鮮やかさが低くなるとブラウンが強くなりブラウンサファイアと呼ばれることになります。また彩度も高いほうが良いと思われますが、明度が高くなく鮮やかさが強すぎればもはやピンクではなくなりオレンジレッド・サファイアになってしまいパパラチアとは呼ばれません。

 

宝石のグレーディングは人間の目で見て行う検査(目視検査)が殆どです。

目視検査のように人間の五感(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚)で品質を判定する検査方法を「官能検査」と呼びますが、限度見本などと比較しながら人間の感覚で合否判定を行う作業では、正確さを保つのはとても難しいことなのです。

 

ところで、蓮の花の意味で名付けられたパパラチア・サファイアですが、日本で見る蓮の花の色はピンクが優勢である為か、蓮の花の色でイメージするとピンクのイメージが強くなってしまいませんか。

私はオレンジピンクの花びらの蓮の花は見たことがありません。ネットで検索しても、淡いピンク~濃いピンク、ピンクパープル、白、変わったところでブルーの画像しか確認できませんでした。

それではパパラチア(蓮の花)のオレンジの要素はどこから来たのでしょうか?

古代のインドやスリランカ地方にはそのような色の蓮が存在したのかもしれません。

 

蓮の花をよく観察するとイエロー~オレンジの花托(かたく)と呼ばれる花の中心部分やおしべがあります。

実はパパラチア・サファイアの原石も均一な色をしているとは限らず、むしろピンクからオレンジまでの色むらや色の変化があったりします。

その原石からどのようにカットするかで、カット後のルースのカラーが決まりますのでカット職人さんの仕事は責任重大です。

ブルーサファイアでは色の濃さ鮮やかさの違いで済みますが、パパラチアはそのカラー範囲に収まらなければパパラチアと呼べなくなってしまうのですから。

 

これは私個人の仮説的見解ですが、ピンクからオレンジへの色の変化のあるきれいな原石を発見したスリランカ人たちは、その色から蓮の花の花びらのピンクと花托やおしべのオレンジカラーを思い起こしパパラチアと命名したのではないかと思うのです。

 

カットされたパパラチア・サファイアも観察方法の変化で表情を変えます。

照明が変われば印象も変わるのは当然ですが、石を傾けたりして見る方向を変化させるとピンクの要素とオレンジの要素のバランスも変化して感じられます。

写真 「パパラチアの塔 絵本」とパパラチアサファイア ルース

 

写真のパパラチア原石たちはとても綺麗でしょう。

皆少しずつカラーが異なりますがパパラチアの色範囲内のピンクとオレンジの中間色になります。

絵本のカラーも、オレンジみを帯びたピンクになっています。

 

まだまだ先になると思いますが、このルースたちがどんなジュエリーになってくるのか楽しみです。

 

P.S. 第1章、第2章でも物語のテーマ曲「ダイアモンド海岸」と「サファイア交換局」を作曲させていただきましたが、今回も第3章のテーマ曲「パパラチアの塔」を作曲させていただきました。絵本を読みながら聴いていただければ幸いです。(絵本の最後にQRコードがあります)

そして今回はテーマ曲だけでなくさらに2曲ご紹介させていただいております。「レクイエム」と「ニュールネッサンス」といタイトルです。物語に沿ったサブテーマ曲といった位置づけです。

 

 

コーディネート例は
クアラントット スタイリスト インスタグラム
https://www.instagram.com/quarantotto_stylist/

クアラントット インスタグラム
https://www.instagram.com/quarantotto/

記憶の行方社 インスタグラム
https://www.instagram.com/kiokunoyukuesha/

 

GIA GG(米国宝石学会 宝石学修了者)
クアラントット宝石鑑定士
宝石学講座元講師
Jazz-Pianist/Composer
山本ウィリアム登喜生 Tokio WILLIAM Yamamoto